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【コラム】男性育休を「当たり前」にするために――MCHグループが育む働き続けやすい組織文化(後編)
■前編はこちらからご覧いただけます。
■生まれた子どもとの時間が「働き方」を変えた
育休中の生活は想像以上に慌ただしいものでした。夜泣きで眠れない日があり、洗濯物は一気に増えました。掃除と洗濯は渥美さん、料理は奥さまと義母が担い、家族で支え合って毎日を切り盛りしていきました。
負担を減らすために乾燥機付きドラム式洗濯機も購入しました。「子どもが生まれると洗濯物の量が本当に増えます。買ってからずいぶんラクになりました」と笑います。
慌ただしい日々の中で「想像と実際はこんなに違うのか」と感じる場面が増えました。両親が自分に向けてくれた時間や労力をあらためて理解し、「今度は自分が子どもに向き合う番だ」と自然に思えたといいます。
大変さの中にも確かな喜びがありました。「表情や声、仕草の変化など、どれをひとつとっても楽しいですよ。大変と楽しさが一緒にくる感じ」と語りながら目を細めます。
復帰後は保育園の送り迎えが生活に入り、働き方にも変化が出ました。「定時で区切らないと迎えに行けないので、時間の使い方が変わりました。残業も減り、生産性も上がっています」と話します。
職場の会話にも子育ての話題を少しだけ交えるようにしました。子どもの話には場を和ませる力があり、距離感を自然に縮め、仕事の関係までよくなる実感があるといいます。
■男性育休を「当たり前」にする企業文化に向けて
渥美さんの育休取得には、個人の努力だけでなく、現場で積み重ねてきた働き方の基盤がありました。先手の準備、業務の標準化、周囲との段取り合わせ、上司の目配り、若手メンバーの誠実なフォロー。それらが組み合わさって初めて、落ち着いた引継ぎが実現しました。
一方で、制度が整っていても現場には別のハードルがあります。「私の場合は恵まれた環境でしたが、全社的にみると同僚への気遣いはあります。支える側も支えられる側も、気持ちよく進められる環境が必要だと思います」と渥美さんは率直に話します。
制度は形としては十分に整っていますが、「自然に使える」状態になるには、まだ工夫の余地があります。人事制度は、働く人が無理なく力を発揮できるようにするための仕組みで、男性育休はその理念を体現する制度のひとつです。育休の取得は働き方を見直す機会となり、チームにとっては業務の棚卸しや属人性の解消にもつながります。
育休を通じて、渥美さんの働き方に対する感覚も少しずつ変わりました。家族の時間は代わりがきかず、子どもの成長は一瞬で過ぎていきます。「仕事は誰かがフォローしてくれますが、家族と向き合う経験だけは自分にしか担えません」という言葉が印象的でした。
こうした3カ月の体験は、MCHグループにとっても小さくない示唆になっています。特別な取り組みではなく、日々の働き方の延長線上で制度を活かし、無理のない運用につなげていくことが大切です。そのためのヒントが、渥美さんの経験の中に確かに息づいています。男性育休が気負わず選べる環境への道のりはまだ続きますが、一人ひとりの実践がMCHグループの組織文化を静かに、しかし確かに前へと押し進めています。
(本記事は2025年11月に取材した内容に基づいています)
